起・承・転・結 Self Novel
「男と女」をテーマにしたNovel Blogです。日常のどこにでもありそうな「等身大」をテーマにした老若男女が織りなすドラマをオリジナル小説で。

等身大の影 vol.4

あのクリスマスの夜以来、千秋と哲平は落ち着いて二人きりで会う機会がなかなかなかった。千秋は、夜になり自分の部屋で哲平からのメールに返信する事がこの頃の唯一の楽しみだった。 職場では事務所に用事で時々入ってくる哲平と、目での挨拶とも言えない合図のようなものが、千秋をまるで学生の頃のようにときめかせていた。
 その頃千秋はあの上司からの事など全く忘れていた・・・・。

 1月も終わりに近づき、やっと仕事も落ち着いたある日哲平から食事でもと誘われた。
二人が行ったのは意外にも哲平が良く行く「定食屋」だった。
店は会社帰りのサラリーマンや、学生などで結構混んでいた。
 
「久しぶりなのに、もっとロマンチックな店の方がよかった?」
「ううん、こういう店の方が好きよ、気取ってないし、哲平くんの普段が分かるし」
「ねぇ、その哲平クンっていうのどうかなー?哲平でいいよ・・・もう俺たちは付き合っているんだから・・」とハニカミ気味に哲平は言った。
「そうね!じゃぁ私の事もチ・ア・キって呼んで、ネ!哲平」と千秋はおどけるように言うと
「おう、分かった千秋!」と二人は顔を見合わせて笑った。
久しぶりにこういう暖ったかい気持ちになったこと、また哲平が年下ということも忘れて
自分が今すごく素直な気持ちでいることに千秋は幸せを感じていた。

「哲平、前に話していた夢って何?」
「あーあれ・・」と言うと急に真面目な顔になり哲平は言った。
「俺が以前勤めていた精密器機の会社の事言ったよね。そこにいた先輩が今会社をしていて、そこで一緒にしないか、って事だよ」
「へぇー、そんなんだ。その会社って?」
 哲平はあまり詳しく話さない方がいいと思った。哲平の先輩は会社を辞めた後、アメリカの企業からヘッドハンティングされ、現在は独立してアメリカで会社を興してしいるのだった。
そこは特許を取得した技術で、世界にでも打って出るような可能性を持っていた。
「・・・同じ精密機械の小さな会社さ」
「でも、哲平の夢はその会社でバリバリ働く事なんだー。」
「まっ、そういうところかな」と笑ってみせた哲平。
 哲平は、千秋と付き合うようになってからずっと悩んでいた。
 自分の夢を追い続けてきて、腰掛けのつもりで今の宅配会社の臨時社員でいるが、
それでもそこには「夢」があったから何とか過してきた。
 しかし、そこで千秋という女性に出会った事、また付き合うようになった事は全く予想外だったからだ。
  
 やがて2月に入りバレンタインまであと1週間という日、千秋は哲平に手作りのチョコを送ろうと会社帰りに本屋へ立ち寄った。
本棚にはバレンタイン特集のコーナーがあり、その1冊を手に取り見ていた時、携帯のメールの着信音が鳴った。てっきり哲平からだと何気に携帯を見ると・・・・あの上司からだった。
 「えっ?」千秋は迷った。そのまま削除するか、見るかを・・。


テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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